疲れた時にほっと一息つく連作――青山美智子『月曜日の抹茶カフェ』

サプリメントのような12のお話

2023年度の中学入試、帰国入試から始まった首都圏の本番シーズンも終わりを迎えました。受験学年のみなさま、本当にお疲れさまでした。
中学受験は2月が年度の切り替わりになりますから、塾ではすでに新年度の授業がスタートしていることと思います。今回はそんな忙しない時期に心を緩めてくれるようなお話を紹介したいと思います。

『月曜日の抹茶カフェ』は、作者の青山美智子さんのデビュー作でもある『木曜日にはココアを』の続編です。『木曜日にはココアを』も『月曜日の抹茶カフェ』も、小さな話が1冊の中に12も入っています。各章は多くても25ページで、そんなページ数なのに気持ちよく完結してくれますので、疲れたときに一話だけ、とほっと一息つける時間になるとよいなと思います。

連作の醍醐味を味わって

川沿いの雰囲気の良い喫茶店、マーブル・カフェでは、定休日である月曜日に普段のカフェとは異なった催しをしています。「抹茶カフェ」となったとある月曜日、1話目の主人公がたまたまカフェに立ち寄ったことで起こる偶然の出会いからストーリーが始まります。

短編とも長編とも違う楽しみが味わえる作品

それぞれの話は独立しているのですが、少しずつつながる部分があり、一人の主人公の目線だけではわからなかったことが見えてきたり、読者にしかわからないニアミスがあったりと短編とも長編とも違う楽しみが味わえます。

また、タイトルに睦月、如月と月の名前が入っていて、通して読むと登場人物たちと共に季節を1年めぐるという楽しみもあります。話ごとに季節を感じさせる描写がありますので、ぜひ見つけて季節の移ろいを感じてみてください。

「縁」という言葉に力をもらう

青山さんの作品には「縁」という言葉が随所に登場します。

「人でも物でも、一度でも出会ったらご縁があったってことだ。縁っていうのは種みたいなもんで、育っていくとあとであでやかな花が咲いたりうまい実がなったりする。」

マーブル・カフェのマスターの言葉です。ご縁=つながり、ではなくつながりの元と考え、それを育てるかどうかは縁を感じた人次第。そして、どちらか片方だけが感じただけではそれっきりになってしまうことが多いけれど、何らかの働きかけによってお互いが育てていくことによって続いていくものだと語ります。

無意識の行いが誰かの幸せにつながっているかもしれない

自分は特に意識をせずに行ったことでも、どこかでだれかの大きな力になっているかもしれない。誰かの幸せにつながっているかもしれない。そんなことを思いながら、日々の小さなことを受け止められたら良いですよね。

どんなにうまくいっていないと思うことでもそれは次の良いことへのきっかけになっているのでは、失敗したからといってそこで終わりじゃないという作者の思いが込められているように思います。

入試問題の出典としても注目される青山美智子さんの作品

青山美智子さんの作品は、近年の中学受験の入試問題や模試の出典としても数多く扱われています。

『木曜日にはココアを』からは「おしゃべりなたまごやき」が2018年度の開成中、表題作の「木曜日にはココアを」が2020年青山学院中等部、そして「のびゆくわれら」2022年の立教新座中、と立て続けに出題されています。

話の前後が省略されずに全部が掲載されているものもあるのは短編だからこそですね。登場人物が専業主夫とキャリアウーマンだったり、保育士の女性と先輩保育士だったりと、小学生とはかけ離れた日常を送る大人の心情の読み取りを問われる問題が並びます。

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2023年度入試でも

そして2023年度も『月曜日の抹茶カフェ』から「拍子木を鳴らして」 という孫と祖母の関係について描かれたものが、栄東中A日程にて出題されました。小学生にとって、大人が主人公の物語は長編だと手を出しにくいかもしれませんが、こういった短編から世界を広げてみてはいかがでしょうか。

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