数学コンテストと数学研究会【桐朋中学校高等学校】

78期では,中学1年生から学期に1回ずつ数学コンテストを行っています。高校1年生の三学期に通算で12回目となる数学コンテストを2022年2月に開催しました。参加は任意ですが,毎回多くの生徒が熱心にとりくんでくれます。

数学コンテストのルール・特徴

毎回7題の難題に挑戦する78期の数学コンテストには次のようなルール・特徴があります。

  1. 開催期間は約2週間
    期間内であれば何度でも提出できます。教員がその場でチェックするので,間違っていたらまた解き直して提出しても構いません。制限時間内に解かなければならない定期考査と異なり,2週間もあるのでじっくりと考えることができます。
  2. 友人・家族との相談も可
    問題を解く上で分かったことや解くための手がかりを相談しても構いません。家族間・友人間で数学の話題をしてもらうことも狙いのひとつです。ただし,答そのものなど「ネタバレ」は禁則事項です。
  3. 電卓・PCの使用も可
    鉛筆のみで解ける問題しか出題していませんが,何を使っても構いません。実際に,過去の回ではプログラムを組んで解いた生徒もいます。

数学コンテストの出題例


中学生・高校生を対象にしたコンテストですが,小学生の知識でも解ける問題を2つほど紹介します:

第12回数学コンテストより

『回文数分解』

左から読みあげても,右から読みあげても同じ0以上の整数のことを回文数といいます。
例えば,「12321」や「55」や「1」などはいずれも回文数です。
いま,与えられた数字をちょうど3つの回文数の和に分解することを「回文数分解」と呼ぶことにします。例えば,2022を回文数分解した式は

2022 = 2002+11+9

となります。また,123456を回文数分解した式のひとつは,

123456 = 66466+56465+525

ですが,「123456 = 67476+55455+525」なども成り立つため,回文数分解は一意ではない(一通りに定まらない)こともわかります。
ではそこで問題です。54321を回文数分解した式を1つ答えてください。

第11回数学コンテストより

『目撃者の証言』
小さな町で起きた銀行強盗事件。
銀行から走り去っていく1人の犯人を8人の目撃者が次のように証言した:
目撃者Aさん「犯人の年齢は20才から34才で,かつ,身長は165cm以上180cm未満でした」
目撃者Bさん「犯人の年齢は25才から44才で,かつ,身長は155cm以上175cm未満でした」
目撃者Cさん「犯人の年齢は25才から49才で,かつ,身長は160cm以上175cm未満でした」
目撃者Dさん「犯人の年齢は30才から49才で,かつ,身長は170cm以上185cm未満でした」
目撃者Eさん「犯人の年齢は30才から44才で,かつ,身長は165cm以上180cm未満でした」
目撃者Fさん「犯人の年齢は35才から49才で,かつ,身長は160cm以上170cm未満でした」
目撃者Gさん「犯人の年齢は25才から34才で,かつ,身長は165cm以上180cm未満でした」
目撃者Hさん「犯人の年齢は35才から39才で,かつ,身長は160cm以上175cm未満でした」
懸命な捜査の結果,犯人は無事に逮捕された。
これは,犯人逮捕後に分かったことであるが,8人の証言のうち,正確な証言をした人は3人しかおらず,残りの5人の証言には誤りが含まれていた。見間違いのせいだろうから,仕方がない。正確な証言をした3名の目撃者をアルファベットで解答せよ。

 

定期考査のように50分の制限時間内で問題に正確に解答できるのは1つの技能だと思いますが,クリエイティブな発想が育まれるのは,時間をかけて自分の中で問題に対して多角的なアプローチをとることだったり,他人との意見の交換の中でだと思います。柔軟な問題解決能力は,試験時間が長いほど効力を発揮し,150分の大学入試の中でも役に立つはずです。数学コンテストは,遊びながらそうした能力や才能を開花させる目的があります。

また,この数学コンテストとは別に,78期学年では1週間に1回「数学研究会」を開いています。JJMOやJMO(数学オリンピック)を目指して,各国の数学オリンピックや数学コンテストを4題ずつ解いており,扱った問題数は300題を超えました。これも参加は任意ですが,「乗連メンバー」10名ほどからなるこじんまりとした精鋭集団です。今年度,高校1年生であるにも関わらず,ついにJMO予選の狭き門(競争倍率20倍以上)を1名の生徒が突破しました。来年度へ向けて,まだまだ挑戦は続きます。

桐朋中学校・高等学校では数学好きな生徒を歓迎しています。
なお,過去の数学コンテストに関しての記事は本校WEBサイト(https://www.toho.ed.jp)も併せてご覧ください。

【掲載した問題の答】

『回文数分解』50005+3993+323など(ほかにもたくさんの分解の仕方があります)
『目撃者の証言』B,C,Fさん(横軸に年齢,縦軸に身長をとり,それぞれの目撃者の証言にもとづく犯人の特徴を長方形のエリアで図示してみてください。長方形どうしの重なりが多数の個所で発生します。そのうち,3つの証言だけが真になるには,長方形がちょうど3枚だけ重なっている部分があるはずです)

【桐朋中学校高等学校 数学科 千馬隆志】

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