中学入試の社会で対策が欠かせない「時事問題」と広島市【不易と流行】

2023年11月に入り、残すところあと2か月になりました。
2024年入試に向けても、2月1日まであと100日を切った状況ですね。

中学入試の社会では「時事問題」の対策が欠かせない

受験勉強の追い込みに入る時期ですが、中学入試の社会科においては「時事問題」の対策は欠かせません。

「時事問題」とは、2023年に起きた出来事の中から話題に上がったものや重要な事柄について問うもので、時事的な話題外にも例えば「〇〇周年」問題や、近年ずっと話題になっている事柄(環境問題、子どもの貧困、少子高齢社会、ジェンダーなど)が出題されます。

2つほど出題例を紹介しましょう。

2023年森村学園中等部 第1回問題[5]問1
 ロシアの侵攻によって始まった戦争をきっかけに、日本でのウクライナの首都の呼び方が変わりました。何という呼び方に変わりましたか。答えなさい。
2023年鷗友学園女子 第1回問題[2]問10
下線部(i)について。2022年6月に、第1回核兵器禁止条約締約国会議が開かれました。日本は条約に参加しておらず、会議にも参加しませんでした。【資料2】を読んで、問いに答えなさい。
【資料2】日本の立場 条約には、核兵器を保有する国々が参加していない。日本が加わって議論をしても、実際に核廃絶にはつながらない。 日本としては、核兵器保有国と非保有国が加わる核拡散防止条約(NPT)の再検討会議の枠組みなどを通じて双方の橋渡しとなり、現実的に核軍縮を前に進めることを優先する。
【資料2】に触れられていない、日本が核兵器禁止条約に参加しない理由として考えられることを答えなさい。一方で、国内外から、日本こそ条約に参加するべきだという意見が数多く出る理由を、日本の歴史を踏まえて説明しなさい

今年もさまざまな出来事がありましたが、そのなかでも来春の中学入試で出題されそうな話題の一つとして「広島サミット」が挙げられます。

「そんなことありましたっけ?」という声が聞こえてきそうです。
もう忘れ去られてしまったでしょうか……。

期間がわずか3日間でしたので印象も薄いかもしれませんが、重要度がとても高い出来事の一つです。
そこで、今回は「広島市」について、そして「サミット」について入試で狙われそうなことも含めて紹介していきます。

「平和都市」だけではない! 広島市の「歴史」

広島市といえば、世界最初の被爆地として世界にも名が知られています。
その影響から「平和都市」と思われていますが、これまでの都市の歩みはどのようなものだったのでしょうか。

戦国時代

現在の広島市の原型は意外に新しく、戦国時代に中国地方を治めていた「毛利氏(毛利輝元)」が新しく平地で城を築いたのが、現在の広島市の中心部となっている太田川下流域の三角州地帯でした。
「城下町を形成するための土地の広さ」「交易路として活用できる瀬戸内海沿岸部」という条件から選ばれたようです。

なお、「広島」という名は、この地に城が築かれる頃(1590年代後半)につけられたと考えられていますが、その由来は諸説あってはっきりしないそうです。

なお、江戸時代には「浅野家」の城下町としてさかえました。

明治時代

中国地方の中心都市である広島市には陸軍の拠点が置かれました(第五師団司令部)。
さらに、広島市南部には軍用港として宇品港が建設され、港近くまでの鉄道も開通しています。

そのため、1894年に始まった日清戦争においては、「前線(戦争の場所)に近い」「鉄道が開通している」「近代港湾がある」「物資の生産・集積・貯蔵に必要な十分な土地がある」という理由で、広島市が臨時の首都に選ばれました。
大本営(軍の司令部)、帝国議会も広島市に移り、天皇も滞在しました。

明治時代以降で東京以外の都市に首都機能が置かれたのは広島市だけです。

原爆投下

戦前の広島市は「軍事都市」として知られていました。
また、建造当初は世界最大の戦艦と言われた「戦艦大和」は、広島市に隣接する呉市で建造されています。

広島市が原爆投下の目標にされた理由の一つには、「軍都」という側面がありました。
「リトルボーイ」と名付けられた原爆の投下は、1945年8月6日午前8時15分、マリアナ諸島テニアン島を飛び立ったB29爆撃機「エノラ・ゲイ」によっておこなわれました。

現在は「原爆ドーム」として知られる当時の「広島県産業奨励館」の東寄り上空で原爆は爆発したとされています。

戦後

原爆の投下によって、広島市の人口は約20%も減少したと言われています。
しかし、かつての軍事施設やその跡地を利用して、重工業や自動車工業を発展させ、復興を果たしました。

現在では瀬戸内工業地域における屈指の工業都市です。
現在の人口は約118万人で、全国で10番目に人口が多い都市であり、全国に20市ある政令指定都市の一つです。

そのため、中国地方の中心都市と位置付けられています。
全国最大規模の路面電車を持つ都市としても知られています。
また、プロ野球(広島東洋カープ)やJリーグ(サンフレッチェ広島)などプロスポーツチームも複数存在しています。

広島市を知る「キーワード」

  • 人口100万都市
    全国に11市。人口は全国第10位です※東京23区を除く。
    また、全国に20市ある「政令指定都市」の一つ。
  • 平和記念都市
    爆心地周辺は平和記念公園として整備。
    原爆ドームは世界文化遺産(1996年)。
  • 太田川の三角州
    河口にできた三角州の上に築かれた都市です。
    原爆投下においては地形的に爆風を遮るものがなく、遠くまで被害が及びました。
  • 路面電車
    走行距離、運行本数、利用客など日本最大規模です。
  • 気候は「瀬戸内気候」
    年間を通して比較的温暖で晴れの日が多く、降水量が少ない。

いかがでしたか。

広島市は一見の価値がある都市だと思います。
是非一度は訪れてみてください。原爆ドームだけでなく、食事もおいしいとてもステキな都市です。

サミット:先進国(主要国)首脳会議[G7]

最後に「サミット」について触れます。

「サミット」とは「先進国(主要国)首脳会議」と言われます。
「G7」とも言います。

サミット参加国と開催都市

世界を牽引(けんいん)する立場にある7カ国の首脳(大統領や首相)が、世界が抱えている問題などを話し合う場です。
参加7カ国は「アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ」、そして日本です。

開催地は各国が順番に担当し、開催国が都市を選定します。

日本が前回開催したのは2016年で、当時は安倍晋三首相でした。
通称は「伊勢志摩サミット」と呼ばれます。

サミットの歴史

サミットは1975年に始まり、冷戦終了後の一時期はロシアも参加していましたが、2014年に起きたウクライナにおける「クリミア紛争」が原因で、ロシアを除外しています。

なお、「広島サミット」では各国の首脳が「原爆資料館」を訪問し、視察しています。
今回のアメリカはバイデン大統領が参加しましたが、アメリカでは2024年に大統領選挙がおこなわれますので、こちらも注目ですね。

おすすめの記事