余りに注目する「剰余系」の問題に対処する方法――数の性質②

「数の性質」において、前回は“素因数分解の利用”をテーマに扱いました。

今回はその「数の性質」第2弾として“剰余(余り)”に注目してみたいと思います。

こういった“余り”に注目する問題は、前回の中心テーマでもあった“素数”に引き続き“倍数・約数”といった数の基本をしっかり理解できているかを問うのに最適であり、数学の世界においても大変重要なものとなります。

ますます中学入試においても取り上げられていくことでしょう。
それでは以下“余り”に関する問題を見ていきましょう。

「あまりが同じ」

問1

$3$で割ると余りが$2$、$5$で割っても余りが$2$となる整数のうち、小さい方から$5$番目の整数を求めなさい。

$3$で割ると$2$余る数($3$の倍数$+2$)、$5$で割ると$2$余る数($5$の倍数$+2$)のイメージを“線分図”であらわすと、

となりますね。

$3$と$5$の最小公倍数は$15$ですから最も小さい数は$15×0+2=2$
$5$番目は、$15×4+2=\underline{62}$となります。

「不足が同じ」

問2

$8$で割ると$6$余り、$11$で割ると$9$余る整数のうち、小さい方から$5$番目の整数を求めなさい。

$8$で割ると$6$余る数、$11$で割ると$9$余る数のイメージを“線分図”であらわすと、

となりますね。
【問1】と違い$8$の倍数の長さと$11$の倍数の長さが一致しません。そこで、

というようにあと$2$伸ばしてみると、$8$の倍数に$8$加えた長さは$8$の倍数、$11$の倍数に$11$を加えた長さは$11$の倍数となりますね。$8$と$11$の最小公倍数は$88$ですから、最も小さい数は$88$に$2$足りない(不足する)数である$88×1-2=86$
$5$番目は
$88×5-2=438$となります。

「書き出し」

問3

$17$で割ると$3$余り、$23$で割ると$7$余る整数のうち、小さい方から$5$番目の整数を求めなさい。

$17$で割ると$3$余る数($17$で割ると$14$不足する数)、$23$で割ると$7$余る数($23$で割ると$16$不足する数)は、余りも不足も一致しませんね。

そこでまずはどちらか一方を“書き出し”てみます。
ここでは$23$で割ると$7$余る数を書き出してみると、$$7, 30, 53, 76, 99, 122, …$$
$122$は$17$で割ると$3$余る数でもあるので、共通する数の最小が見つかりました。
その後は以下のイメージのように、

$17$と$23$の最小公倍数$391$を加えていけば、つねに$17$で割ると$3$余る数でもあり、$23$で割ると$7$余る数であるものが見つかりますね。$5$番目なので、
$122+391×4=1686$となります。

「余りがいくつかわからない」

問4

$74$個のみかんと$100$本のバナナと$165$個のりんごをそれぞれに同じ数ずつできるだけ多くの子供に分けようとしたところ、同じ数だけ余りました。子供は何人いましたか。

【問1】同様に“余り”が同じですが、それがいくつかはわかっていません。
同様に“線分図”でイメージしてみましょう。

“線分図”の左端の余りを同じにするためには、右端から以下のように同じ数で分けていくと、差にあたる$26$や$65$を割り切れなければいけないことがわかります。

“できるだけ多くの子供にに分ける”ことから、$26$と$65$の最大公約数にあたる$13$人が正解です。

入試間近ともなれば正直上記の問題レベルであれば“パターン化”してしまうことでしょう。
しかしながら、学び始めの時期や苦手となってしまった場合等、たんにパターン演習として扱うのではなく、上記のような“線分図”等を利用して意味をしっかりつかむことが大切です。

こういったパターン演習だけではない“理解する”“意味を知る”学習こそが応用力を生んでいきます。

「余り」に関する問題の多様な広がり

問5

次の計算の結果を$9$で割ったときの余りを求めなさい。$$1234567+2345671+3456712+4567123+5671234$$

“余り”に関する問題はさらに様々な広がりを見せています。この【問5】のような問題では“余りの和(積)”といったものがテーマとなります(高校数学では“合同式”とよばれる考え方となっていきます)。

小さな数で確かめる

もう少し小さな数で実験してみましょう。

「$567$は$9$で割り切れますか?」

もちろんそのまま割り算をしても$567$は$9$で割り切れることがわかりますが、皆さんご存知の「倍数判定法」において“$9$の倍数は『各位の和が$9$の倍数』”でしたね。よって、
$5+6+7=18$ ⇐$9$の倍数($9$で割り切れる)
それでは、

「$568$を$9$で割ると余りはいくつ?」

こちらももちろんそのまま割り算をしても、$568$を$9$で割ると$1$余ることがわかりますが、上記のような「倍数判定法」を利用すると、
$5+6+8=19$ $19÷9=2…1$
と$1$余ることがわかりますね。
さらに足し算をしてみます。

「$568+568$の計算結果を$9$で割ると余りはいくつ?」

$568+568=1136$
$1136÷9=126…2$
もちろん上記のように実際に足した数を$9$で割ると余りが2であることがわかりますが、ここで“余りの和”に注目してみると、
$568(5+6+8=19$ $19÷9=2…1)$は、$9$で割ると余りが1であることが「倍数判定法」でわかっているので、余りの$1$と余りの$1$を足して計算結果の余りは$2$と求めることができます。

【問5】を計算してみる

したがって、【問5】は一つずつの数が全て
$1+2+3+4+5+6+7=28$ $28÷9=3…1$
と余りが$1$とわかりますので、
計算結果は$1+1+1+1+1=5$と求められます。

具体的に試行錯誤しつつ、自然に吸収する

このように“具体的”に試行錯誤しつつ、自然に知識として吸収することが、より高いレベルの問題に太刀打ちできる基本行動となりますね。

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