生物研究の最前線に立つ研究者15人が語り尽くすアンソロジー

生き物に魅了された15人の研究者たち

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河出書房新社
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“何かに夢中になっている人の姿は、人をまた魅了します”

本書の「はじめに」にある言葉です。この本は、生物研究の第一線に立つ研究者15人が、研究の魅力のみならず、今の仕事につくまでの道のりや日々考えていることなどを語りつくしたアンソロジーです。研究対象として、身近なスズメ、チョウ、アザラシ、魚、タコやイカ、霊長類から新種の生物、深海の鯨骨生物群集まで様々な生き物たちが取り上げられています。

研究者の目線で

今年(2023年)の7月に行われた四谷大塚の合不合判定テストにて、「魚も鏡の姿を自分とわかる」という章が使われました。大阪公立大学の幸田正典さんが、"魚も鏡の姿を自分とわかるかどうか"ということについて書いた文章です。

筆者の目を通して素直な言葉で語られる実験の進捗

ホンソメという魚が鏡像を「自分だ」と認識していることを確認するための「ミラーテスト」の流れが詳細に載っているのですが、専門書のような難しさはなく、試行錯誤しながら仮説を立てる様子、結果を見たときの驚きなどが素直な言葉で書かれています。

Photo by (c)Tomo.Yun

専門の研究者である幸田さんは、「(ホンソメが)喉を擦る行動を初めてビデオで見た時、椅子から転げ落ちそうなほど驚いた」とのこと。このように筆者の目線で実験が進むので、置いていかれることなく読み進めることができます。

魚にも自己認識など高度な知性が備わっている

実験結果によって、ホンソメが、他の個体と自分を区別して鏡で認識できることがわかるのですが、もともと魚類については、霊長類、類人猿やヒトと比べて記憶力や認知能力は低いと考えられてきました。しかし、今回の発見によって、魚にも自己認識など高度な知性が備わっていることが確認できたのです。

最近になって幸田さんの研究室では、魚類の論理的思考、顔認知に基づく個体識別などを明らかにしています。このほか、相手の考えを理解する能力、さらに共感性といったこれまでは想像もされなかった能力も次々と魚類で明らかにされつつあるといいます。

こうして研究が進むことを、研究の最前線に立つ筆者自身がどれだけ楽しみしているかが言葉を通じて伝わってきて、こちらもワクワクしてきてしまいます。

河出書房新社「14歳の世渡り術」シリーズ

今回の本は「14歳の世渡り術」というYA(ヤングアダルト)向けのシリーズのうちの1冊です。

多感な時期に本から良い刺激を

世渡り術というとどんな印象を抱くでしょうか。

辞書で「世渡り」を引くと、世間でうまく立ち回ること、という意味が出てきます。実際に本のターゲット層である子どもたちは、まだ世の中に出ているとは言い難いですよね。でも、それぞれがどんなふうに人生の次のステップを踏み出すのかは、この多感な時期にどんな刺激を受けることができるかに大きな影響を受けるように思います。

本格的な本を読む入り口にうってつけのシリーズ

刊行されてから15年以上が経ちラインナップは悠に100点を超え、タイトルを眺めてみるだけでも自分の知らない世界が広がる感じがします。

 

イラストがたくさんのQ&A形式のような読みやすさを優先したものではなく、もうちょっと本格的な本を読んでみたいと思ったときに、ちょうど良い難しさの本が並びます。

本書では、研究者の研究活動や生活、研究を始めたきっかけに触れ、こんなに熱量高く、エネルギーにあふれる大人たちがいるのだと知ることは、子どもたちにとって未来への視野が広がりますね。

鳥類学者が書く、腹絶倒エッセイ

『最前線に立つ研究者15人の白熱!講義 生きものは不思議』を読んで、研究者の書くエッセイに興味を持った方におすすめしたいのが、『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』というタイトルからして楽しい感じがする1冊です。

『生き物は不思議』で取り上げられた15人の研究者の一人でもある鳥類学者、川上和人さんの自然科学エッセイで、読んでみると、タイトルの印象に反して、最初から最後まで鳥類への愛にあふれています。そして何と言っても文体が軽快で、ギャグ要素が満載です。

ユーモアに富んで語られる、想像を超えるエピソードの数々

生態系の諸問題から、東京都の「都民の鳥」はユリカモメでなくメグロであるべきだとか、森永チョコボールのキョロちゃんについての考察など話題は多岐に渡ります。仕事先は無人島やジャングルなど人が近寄らないような場所ばかり。火山の噴火で調査地がなくなったことは『生き物は不思議』の中でも取り上げていました。

想像を超えるエピソードの数々が、時には大真面目に、時には面白おかしく語られます。血を吸うカラスや空飛ぶカタツムリ相手に奮闘の日々が綴られたこの本は、鳥よりも鳥類学者に詳しくなるかもしれません。

こちらの本に限らず書き手をきっかけに選ぶ本の幅を広げることで、今まで出会わなかったジャンルにも目を向けてみてほしいと思います。

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