センス・オブ・ワンダー―驚きと不思議に開かれた感受性―

センス・オブ・ワンダー―驚きと不思議に開かれた感受性―

今回はレイチェル・カーソンの名著、『センス・オブ・ワンダー』を紹介します。

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30年近くも前に上遠恵子さんによって日本語に訳された『センス・オブ・ワンダー』は、アメリカの生物学者・環境保護活動家であるレイチェル・カーソンの遺作として、彼女の友人たちによって出版された作品です。

日常の中で感じる自然の美しさ

カーソンは、人間が引き起こした環境汚染にいち早く警鐘をならした、『沈黙の春』の著者としてご存じの方も多いと思います。こちらは彼女が甥のロジャーと一緒に海辺や森を探検した際に感じたこと、幼いロジャーが自然に触れて自然界の美しいもの、不思議なものに触れて成長していく様を綴ったエッセイになっています。
本文中に添えられているメーン州の写真もとても美しく、抒情的な言葉運びはまるで詩のようにも感じます。

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カーソンとロジャーが感じた「ありのままの自然」

生物学者としてのカーソンは、化学物質の影響や環境破壊が及ぼす影響についての研究で知られていますが、『センス・オブ・ワンダー』においては、彼女とロジャーが感じたありのままの自然の姿を通して、自然や環境に対する深い洞察と敬意に溢れた1冊になっています。

森田真生さんの『センス・オブ・ワンダー』

こちらの新訳として話題になったのが、3月に出版されたばかりの森田真生さんの『センス・オブ・ワンダー 訳とそのつづき』です。

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カーソンは、『センス・オブ・ワンダー』をもっとふくらませていくことを考えていたようで、そういった意味では未完の作品ともいえるかもしれません。カーソンの新訳の後には、森田さんが2人の子ども達と過ごす中での「センス・オブ・ワンダー」を原著の「そのつづき」として書いています。

日常の中で感じる自然の美しさ

カーソンのエッセイの舞台となったのは、海辺の別荘という日常から隔絶された場所なのですが、森田さんは、季節という自然を感じるためには、必ずしも日常を離れる必要はないと語ります。

森田さんが毎日を過ごす京都にて、衣食住を営む一つひとつの場面で見過ごされがちな美しさや驚きを再発見し、読み手に余すことなくシェアしてくれています。暮らしと季節を交わらせていくという表現は素敵ですね。

未完の作品のつづきを京都から

森田さん自身は、虫や植物を育てることに馴染みのない環境で育ち、子どもたちとカブトムシを育てるようになるまで幼虫を手に持ったこともなかったそうです。でも、常に目の前のものに目を見はり、その瞬間の世界をつかみ取ろうとする子どもたちを前に、変化に抗うことなく、自然と対話することで自分自身も変化していくことを受け入れていきます。

世界はいつも驚きに満ちている。
目を開き、耳を澄ませば、自然は日々新たに、思わぬ出会いをもたらしてくれる。(P64)

日常の中で自然と触れ合うことを楽しみ、驚き、感心しながら触れ合っていく様は、日々の忙しない日々から離れ、合理性、効率性ばかりを求める世の中から距離を置くためのヒントを与えてくれる気がします。

京都という地で、同じ今を生きながら書かれたからこそ伝わる情感

森田さんの新訳が単なる言葉の翻訳にとどまらず、現代の感覚に合った翻訳と感じるのは、日本の京都という土地で、同じ今を生きながら書かれたものだということもあるかもしれません。 原著のメッセージがより直接的に、そして親しみやすく身近なものに感じられるようになっています。

子どもの傍でともに感じること

子どもたちの世界がずっと瑞々しく、新鮮な驚きに満ちていて欲しいと願いますが、この人工物に溢れ、情緒面でも慌ただしい現代社会において、大人になるまでに失われてしまうことも多いでしょう。私たち大人が心に留めておかなければならないカーソンの言葉を、森田さんの訳で紹介します。

妖精の力を借りずに生まれ持ったセンス・オブ・ワンダーを保ち続けようとするなら、この感受性をともに分かち合い、生きる喜びと興奮、不思議を一緒に再発見していってくれる、少なくとも一人の大人の助けが必要です。(P21)

世の中にあるあらゆるものは物語に満ちていて、子どもたちには生まれた時から、自然の中で自分の物語を作る力が備わっています。親が無理やり教えたり、導いたりすることよりも、ただ傍で子どもと一緒に感じることが求められています。改めて、私たち大人がどんな環境を子どもたちへ残していけるのか、関わり方や責任を考えさせられます。

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