ドリアン助川『プチ革命 言葉の森を育てよう』【読書で世界を広げよう】

現代社会を生き抜くためのプチ革命

今回は岩波ジュニア新書からの1冊、『プチ革命 言葉の森を育てよう』を紹介します。

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心とは言葉の森。

「自分らしい人生を築こうとする時、そこで言葉はどんな働きをするのか」

本書の最終章で著者のドリアン助川さんが読者にあらためて語り掛ける言葉です。

現代社会での自己実現の難しさ

この本は大きく第1章から4章までと、第5章という2つのパートに分かれています。そのうち、前半では現代の豊かさを追い求めるばかりに利便化、効率化が進み労働の場を失った社会、そしてそのような社会での自己実現の難しさが述べられています。

大人でもいざ突きつけられると難しい問題ではありますが、中学受験の入試問題では昨今の社会についての問題点を指摘した文章が頻繁に出題されます。今の世の中を生き抜くには、これまでとは違う力が必要である、というのはよく語られるところですが、ドリアンさんは、『自分たちで「意識的」に開拓していくしかない』と述べ、それぞれが意識的な行為で自分の状況を変えていくという「プチ革命」を起こすべきだと強く、熱く論じています。

名詞の言の葉を繁らせること

ドリアンさんは心の中には「言葉の森」があるのだと説明します。言葉のみなもとは心であり、心と言葉は切り離すことができないと考えるのです。言葉の森にはこれまでの経験の中で覚えた言葉=木々がたくさん植えられています。

そんな木々の中に、敢えて自分の選んだ1本の木を植えてみること。その木を大切に育て、言葉の葉を繁らせていくこと。そしてたくさんの言葉の中でも、名詞は言葉の森の中心であり、まずは名詞の葉っぱをたくさん集めてみること。

名詞で繁らせた言葉の数だけ、その分野に対する認識は深く豊かになっていきます。ある分野の言葉=名詞を知ることは、その世界に自ら飛び込むことであり、自分から飛び込んだという経験がその言葉を活きた言葉に変えていくのです。

自分なりの辞書を創る

ドリアンさんが50歳近くになって一からフランス語を学ぶ場面では、自分なりの辞書を創り、言葉に生きたイメージを持たせることが大事だとも語っています。これから英語を本格的に学ぶことになる子どもたちにとっても、学び直しを考える大人にとっても、良い刺激になるのではと思いました。言葉はインプットするだけでは自分のものにならないのだな、と改めて感じます。

7人の賢人の言葉をめぐる旅

この本で特徴的なのは後半、5章からの「言葉をめぐる旅」というドリアンさんの知人、友人である各界で活躍されている方々へのインタビューが載っているところです。皆さん、本当に多才な顔ぶれなのですが、ただの成功体験談と読んでしまってはもったいないように思います。

豊かに言葉を使う、豊かに生きる

自分の世界を切り開いてきた方々から感じるのは、豊かに言葉を使うことは豊かな生き方につながるということ。言葉と格闘し、自分のものにしてきた方の思考の跡を読むことができます。

例えば、インタビューの中で複数の方が「とにかく丸暗記することが必要なときもある」と話します。丸暗記というと考えなしに頭に放り込むようなイメージがあり、あまり良い印象がないかもしれません。しかし、丸暗記を経て、それを知っていて当然と思えるほど知識レベルを上げることで見える世界があります。

「言葉の森に木々を植え付けていく」

わたしも指導の際に、知識がなければ思考ができないという話をすることがありますが、ドリアンさんはこれを「言葉の森に恣意的に木々を植え付けていく行為」と書いています。

一人ひとりが自分なりに言葉を大切にしていくこと、その先には他者の言葉を取り込みながら価値あるものとして自分の言葉の森に植えていく行為があります。この本は、言葉への向き合い方を変え、言葉の森を育てることで、夢をかなえるチャンスをつかもうという若者たちに向けた応援歌です。

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