四季を感じる季節の言葉、五感を使って季節を感じる

四季を感じる季節の言葉

師走を迎え、2024年も残すところわずかとなりました。

今年は夏の暑さが例年よりも長く残り、秋がほんの短い時間だったように思います。それでも、いつのまにか木々は色づき、銀杏並木のまぶしいほどの黄色を楽しめるようになりましたし、最近の日の落ちる早さには冬の訪れを感じます。

豊かな四季のある国である日本には、季節に関わりの深い言葉がたくさんあります。今回は日本独自の豊かな表現を持つ大和言葉(和語ということもあります)、そして季語について取り上げた本を2冊紹介します。

「大和言葉」を美しい写真とともに味わう

大和言葉とは、はるか昔に私たちの先祖が創り出した日本固有の言葉であり、その伝統の上に生まれた言葉のことです。 日本人は、古来より伝わる大和言葉と中国から取り入れた漢語、そして中国以外の国から入ってきた外来語、これら3種類の言葉を、日常の中で組み合わせ、使い分けているのです。

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「世界でいちばん素敵な大和言葉の教室」は、表紙のシンプルさからは想像がつかないほど中身は鮮やか。フルカラーの美しい写真とともに綴られるたくさんの言葉たちはQ&Aの形式で、簡潔でわかりやすい説明も魅力です。

「山は笑ったり、眠ったり…… 擬人化しながら自然を愛でました。」

山笑うと言う言葉は、「山の木々が一面に芽吹き、うっすらと霞んで見える様子のこと」 ですが、このような見出しではじまるページの左には、花が咲いて色づいた春の山の写真が一面に広がります。 「自然を擬人化した素敵な表現は、他にある?」 、「春の山に関する大和言葉をもっと知りたい!」 といった、1つの言葉から掘り下げるヒントがたくさん。

身近にあるようで実は深く知らない言葉に出会う

身近にあるようで実は深く知らない言葉にも、多く出会います。春に遠くの風景がぼんやりと見える現象である「かすみ」は、空気中に水滴やちりが浮かんでいる状態ですが、同じ現象でも夜に出るものは「おぼろ」という名前になります。

また、「霧」は気象用語で、1kmより先が見えないことが定義ですが、俳句の世界では秋の季語となります。時間帯や季節によって呼び名が異なるところに日本語の奥深さ、昔の人々の繊細な感性を感じます。

大和言葉の響きのやわらかさ、美しさを改めて見直し、身近なところからきれいな言葉を選んで使う習慣を広げていくことで、自然と言葉の世界が豊かになることと思います。

クイズで学ぶ季節の言葉

今回紹介するもう1冊の本は、「子どもの教養 クイズで学ぼう 季語の世界」というタイトルの通り、季語の意味にまつわるクイズと、その解説という形で、傍題もあわせると700以上の言葉が紹介されています。

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17音の俳句に必ず入る「季語」

季語とは、春、夏、秋、冬、新年の各季節に分類される季節の言葉のことで、俳句は世界で一番短い詩と言われ、そのたった17音の中に、季語を入れ込むことが決まりになっています。

季語は、自然に関係するものの他にも「手袋」「焼芋」など衣食住にまつわるものや、「運動会」「潮干狩り」など生活に根付いた行事、イベント事など幅広く、それらをまとめて記したものを「歳時記」といいます。本書でも、歳時記の一般的な分類に合わせて「時候」、「天文」、「地理」、「生活と行事」、「動物」、「植物」の6項目に分かれています。

見開きのクイズページは「教養の宝庫」

見開きのクイズページは、正解だけではなく、語源となった歴史の話、科学の話が続きます。その季語が使われている俳句とその鑑賞文も載せられており、まさに教養の宝庫です。

中学受験の入試問題でも、「この季語の季節はいつですか?」というような問題が出ることがありますが、ただの知識の詰め込みと吐き出しではなく、五感を使って季節を感じて得たものであってほしいと常々思っています。

きれいな言葉に常に触れ続けること

今回紹介した本に限らず、知らなかった言葉と出会い、素敵だなぁと感じたら、少し立ち止まってゆっくりと言葉に触れてみてほしいと思います。例えばその言葉を声に出して読んでみると、目で追って読んだ時とは違う感覚が得られるかもしれません。

言葉を知ることと、自分の言葉として使いこなせるようになることの間には少し隔たりがあります。本で出会った言葉と、自分の見聞きしたこと、感じたことが結びつくことで、その言葉はぐっと体の中に入ってきます。

きれいな言葉がたくさん詰まった本をいつでも手に届くところに置き、言葉に触れる時間を楽しんでみてください。

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