中学入試国語の頻出テーマ「哲学」を身近に感じる2冊の本

中学入試の頻出テーマ「哲学」

今回は、哲学について取り上げた本を紹介します。昨今の中学入試の説明的文章は、非常に幅広いテーマからの出題がありますが、その中でも頻出のテーマの一つが哲学です。

模試やテキストでもよく取り上げられるようになってきましたが、子どもたちにとって、「哲学」は馴染みがなく、捉えにくい言葉です。哲学という言葉を聞いただけで、アレルギー症状が出てきてしまい、「難しくて読む気がおきない、何を言いたいかわからない」と、文章と向き合うことを投げ出してしまう子も少なくありません。

もちろん内容自体が難しいということもあるのですが、それ以前の理由として、「哲学」という言葉自体の示すところがモヤモヤとしてしまっていることで、難しそうだな、と尻込みしてしまっているように感じます。

普遍的な問いについて考える「哲学」は自分のまわりの世界を見直す営み

哲学という学問は、世界の仕組みを理解したいと思った先人たちによって生み出されました。私たちが生きる意味、「どうして?」「なぜ?」と身の回りにあふれる「普遍的な問い」について考える哲学は、これまでと視点を変えて、自分のまわりの世界を見直すことでもあります。そう考えれば、「問い」に向きあうのに早すぎることはありません。

紹介する本を通して、子どもたちと一緒に「問い」に向き合い、考えを深める面白さを味わってみてください。大人から答えを与えられることを待つばかりではなく、自分の頭や心で考え、自分なりの答えを出す力を養っていってほしいと思います。

『Qこどものための哲学』 Eテレの人気番組の書籍化

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「なんでお母さんは いつもおこるの?」 「なんでウンコで みんな笑うの?」「べんりって ほんとうにいいこと?」 「死んだら どうなるの?」

ずらりと並ぶ楽しいタイトルのこちらの本は、NHKのEテレで放送されていた、子ども向けの哲学番組を書籍化したものです。

3年生の少年Qくんとぬいぐるみのチッチとの15分の対話を元に、「深く考える」とはどういうことか、正解はない問題にどう向き合うか、「自分の答え」の見つけ方を模索していきます。子どもたちが物事を考えるきっかけになるような、身近で親しみやすい問いかけやストーリーが並び、思いがけない答えに出会うおもしろさもありますね。

最初は伴走しながら読み進めるのがおすすめ

元々が動画なので画像やイラストもたくさん入っていますし、総ルビなので低学年から手に取ることができますが、最初のうちは読み聞かせをしたり、一緒に読んだりすることで読み進めるための伴走をしてあげると良いと思います。

考えが進まなくなったときの打開策「Q ワード」

また巻末には、考えが進まなくなってしまったときの打開策として「Qワード」というものが紹介されています。

「なんで?」「立場を変えたら?」「反対は?」「もし~だったら?」など、その言葉を軸に、他の考え方や新たな視点に気づくようなヒントになる言葉が並びます。哲学的な話だけでなく、日々の対話を深めるためにもこういった言葉を使いこなせると良さそうですね。

『Q~こどものための哲学』

アクティブ・ラーニングに必要な「思考力と対話力」を育むこども向け哲学番組。小学3年生の少年Qくんが、日常の中で抱いた不満や願望に、ぬいぐるみのチッチがなぜそう思ったのかを問いかけ、対話しながら、自分なりの答えを探求していく人形劇です。(番組HPより)
https://www.nhk.or.jp/school/sougou/q/

押さえておきたい1冊『はじめての哲学』(藤田正勝)

最後に、近年の入試問題にて取り上げられた本を紹介します。

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藤田正勝さんの『はじめての哲学』は、2022年度の中学入試において 豊島岡女子学園中、渋谷教育学園幕張中などの難関校を含む5校で出題され、今年度も続いています。

日常の中で抱く問いの延長線上にある「哲学」

哲学的に考えるとはどういうことか、について、子どもたちにとって身近に感じる問いを切り口に展開されます。哲学を、日常の中で抱く問いの延長上に生まれてきたものととらえ、物事も表面的な理解で満足せず、自分自身で深く考えていくことの楽しさを伝える本です。

本書の最後には、筆者、藤田さんからの読書案内がついており、もっと深めたいと思った時に読んでほしい本が並んでいるところもポイントです。

問いを重ねることで、広い視野を持って世の中を見てほしい

入試問題を解くにあたり、子どもたちは、本文を読み、問いに答えようと改めて本文に立ち戻るということを繰り返します。解き進めることで自然と書かれていることへの理解が深まっていくのです。

「哲学」を主題にした入試問題には、問いを重ねることで、広い視野を持って世の中を見てほしい、考えることが好きな子であって欲しい、そんな学校の先生方とのメッセージが込められている気がします。

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