中学受験2026国語│9校出題の注目作『「嘘をつく」とはどういうことか』

今年の最頻出も、ちくまプリマー新書からの1

「嘘をつく」とはどういうことかー哲学から考える(2026年度入試で9校出題)

今月は2026年度の入試の頻出作品の中から、池田喬さんの『「嘘をつく」とはどういうことかー哲学から考える』を紹介します。今年度は比較的出典がばらけたように感じたのですが、本書は、2026年度中学入試の説明的文章の中では最多の9校での出題となりました。

わからない世界と向き合うために(2025年度入試で10校以上出題)

2025年1月にちくまプリマ―新書から出版された作品で、昨年度、10校以上の学校で取り上げられた中屋敷均さんの『わからない世界と向き合うために』も同シリーズからのものでした。

また、前年に刊行されたものからの出題が多い昨今の傾向を受け、塾側も新刊にはアンテナを張っているようで、直前期の模試においても取り上げられておりました。

『「嘘をつく」とはどういうことかー哲学から考える』

「嘘をついてはいけない」と教えられてきた私たちにとって、「嘘」はとても身近でありながら、実はきちんと考えたことの少ないテーマかもしれません。

本書の冒頭では、谷川俊太郎さんの「うそ」という詩が紹介されています。

短い言葉の連なりの中に、「嘘とは何か」を考えるためのきっかけがちりばめられていて、まさにタイトルの問いへと読者を導いてくれるものになっています。

「嘘をつく」とは?

悪いとわかっているのに、それでもなぜ人は嘘をつくのだろう、そもそも「嘘をつく」とは?と題名の通りに導かれるように読み進めると、「嘘」とひとくくりにしていたものの輪郭が、少しずつほどけていきます。

 嘘と冗談はどう違うのか。

 嘘をつかれた、ということと、騙された、ということは同じなのか。

 間違ったことを言うのと、嘘をつくのは同じなのか。

これまで同じようなものとして扱ってきた言葉が並べられることで、それぞれが等しくないことに気づかされます。似ている概念を丁寧に並べ、違いを考えていくというのは、哲学のような大きな抽象的な問いを考えるための一つの手法なのだそうです。

「哲学」の入り口として親子で考える練習を

哲学という言葉は、苦手意識を持つ小学生も多く、抽象的で遠い世界の議論のように感じているかもしれません。本書は、「嘘」という日常的な題材を入り口にして考える練習をさせてくれる一冊です。

嘘を単なる道徳の問題として片づけるのではなく、以下のように小さな問いを積み重ねながら進んでいきます。

 ■そもそも何をしていることなのか

 ■なぜ悪いと言われるのか

 ■それでもなぜ人は嘘をつくのか

章立ても細かく、一歩ずつ階段を上るように考えが深まっていく構成になっています。一気に読み通す必要はなく、少しずつ、問いを受け止めながら進んでいくことができます。そうすることで「嘘をつく」という行為が、驚くほど多くの要素を含んだ複雑なものだとわかってくるのです。

本書は、最後にもう一度谷川さんの詩に立ち戻る仕組みになっています。詩の解釈はひとつではありませんから、それぞれが自分なりの答えを持って読み終えたときに、最初に読んだときとは違ったものとなって返ってくるはずです。

出題箇所を部分読みするのもおすすめ

出題校の一つ、埼玉の女子難関校である浦和明の星中(1回)は、最終章の「5正直さとは-心の葛藤と自分を大切にすること」から、9ページに渡っての出題でした。本文中の章のタイトルや小見出しは省かれた状態で試験問題として出されているわけですが、同じ部分を本で読むと、見出しが読むことを助けてくれます。

文章・問いに向き合う気持ちを育てる大人の役割

小学生が一人で読み切るには難しい一冊ではありますが、こういった文章や問いに向き合おうとする気持ちを育てることが周りの大人の役割だと思っています。

本を、ただ「読みなさい」と渡すのではなく

■この章が試験に出たんだって
■ここだけでも一緒に読んでみようか

など、大人の働きかけ一つで本が近くなります

「向き合える=一人で読んで理解できる」ではありません。わからない部分があってもよいのです。問いを受け取りながら読み進めること自体が、思考の経験となり、学校が求めている力であるように思います。

最後に

哲学について、もう少し易しい入り口がほしいと思われた方は、以前哲学についての入門書を紹介したこちらの記事もおすすめします。

中学入試国語の頻出テーマ「哲学」を身近に感じる2冊の本(2024/4/18)

おもに以下の作品について紹介しています。NHKの動画や絵本の助けを借りて、哲学嫌いにしない素地を作るところからいかがでしょうか。

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