本を通して異文化と出会い、他者について想像する力を養う珠玉の2冊

異文化に触れるきっかけに

今回ご紹介するのは、本を通して他国の文化に触れることのできる2冊です。
『となりのアブダラくん』、『茶畑のジャヤ』という2冊の本の題名に入っているのは、主人公が出会った友人たちの名前です。

主人公の目線を通して日本と異なる文化に触れることで色々な気づきがあるのではないでしょうか。海外への旅に出ることができなくても、異文化との初めての出会いというのは日常の中にいくらでも転がっているものです。他者を理解したいと思う気持ち、想像する力の大切さを感じてほしいと思います。

物語を通して多様性を理解する――黒川裕子『となりのアブダラくん』

主人公のハルヤは、小さいころから空手少年である一方で、実は本当の趣味は編みぐるみ作りです。男らしくいなければいけないという気持ちから、周りの友人に編みぐるみがすきなことを隠して生活していましたが、好きなことを隠していなければならない生活に葛藤を感じていました。

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そのハルヤのクラスに転校生としてやってきた、パキスタン人のアブダラくん。 クラスメイトとして一緒に過ごすうちに、国籍の違い、信仰宗教の違い、文化の違い、趣味の違いなど、目に見えてわかるような容姿だけでなく、たくさんの違いがあることがわかっていきます。

何が差別を生んでいるのか

子どもたちにとって、価値判断の基準は「自分達と同じか、違うか」「自分たちにとっての普通かどうか」であり、自分と違うものを無意識に排除しがちです。

大人でも無意識のうちにその枠に当てはめて考えてしまうことがありますよね。国籍や宗教の問題だけでなく、個々の体質や趣味についても同じ問題として扱っていることで、何が差別を生んでいるのかがわかりやすく伝わってきます。

「自分と異なる人間を無意識に排除してしまっていませんか、
未知のことは遠ざけたくなるのが人間。知らないことなら知ればいい」

理想を語るだけでは終わらせない

現実社会でもありそうな不理解や想像力不足が、本書の中にもたくさん出てきます。多文化共生、合理的配慮、多様性の受容など、よく聞かれる言葉ではありますが、理想を口で言うだけは簡単なことだとと痛感させられます。

また、設定上仕方がないとはいえ、両親をはじめとする大人の無知さ、自己中心的な考え方が目立つのですが、この本を読んだ子どもたちが 「これではいけない」と気づくきっかけになればと思います。

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舞台はスリランカ・セイロン島――中川なをみ『茶畑のジャヤ』

鮮やかな緑色の表紙が目を引くこちらのお話の舞台は、スリランカです。

スリランカはインドの南東にある北海道よりも一回りほど小さい島で、セイロン島という名でも知られています。「光り輝く島」という意味を持つこの島は、紅茶の産地として有名で、眺望に恵まれた高原地帯をはじめ、豊かな自然に恵まれています。

観光情報からは見えてこないスリランカの姿

主人公である5年生の周は、テストの成績がよかったことをクラスメイトに皮肉られ、クラスで孤立してしまいます。子どもにとっては、学校の教室という狭い世界が生活のすべてですから、教室の中に居場所をなくしたと感じた周は、海外で働く祖父の誘いを受けてスリランカへ旅することとなります。

スリランカは、今となっては観光地として有名ですが、2009年に長く続く内戦が終わり、本の中には、観光として訪れただけではわからないスリランカの様子も出てきます。

想像力が持つ無限の可能性

旅先で出会う人達や自然から気付きを得て、強くなっていく主人公。茶畑で家の仕事である茶摘みを手伝う少女ジャヤを通して、スリランカの民族対立を知った周は、自分とまわりの関係に重ねて考えるようになります。

『想像力って、もしかしたら、人を好きになるためのものかもしれない』
『たくさん想像できる人は人を殺さない。悲しみが想像できるから』

戦争が身近なこととして感じられるようになってしまった今の世の中で、大切にしたいと思う言葉です。

「知らないことをもっと知りたい」気持ちを喚起させる

スリランカに限らず、その国の持っている歴史を子どもに伝えるのはとても難しいことですが、物語仕立てになっていて子どもにもわかりやすく語られています。物語を通して出会うことで、知らないことをもっと知りたいと思う気持ちが大きくなればと思います。

読後感は爽やかで、主人公といっしょに旅をしてスリランカの風を感じられるような一冊です。周に、一人で居ることは寂しいことではない、好きなことは諦めない、ということを教えてくれたジャヤ。成長した二人がまたどこかで出会うことがあればいいなと思います。

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